獣害対策を知る

各地域で、シカやクマ等による人工林の獣害が広い範囲で発生しており、被害内容・地域特性に応じた対策が引き続き必要となっています。

被害状況

シカ(ニホンジカ・カモシカ)の被害

植栽したばかりのやわらかい苗や、まだ背の低い成長途上の木(幼齢木)の枝葉、樹皮などを食べたり、角を木にこすりつけて樹皮をはがしてしまうことで、木の成長を阻害してしまい、枯死に至ることもあります。下草等も食べてしまうため、生物多様性が失われ、さらには土壌の流出などにつながる恐れもあります。秩父地域の森林のほぼ全域が、シカ等の食害が原因で、防護柵等を設置しなければ植栽した木が育たないような状況であり、効果的な被害防止対策の実施が緊急の課題となっています。

クマ(ツキノワグマ)の被害

木の樹皮を歯や爪で剥ぐ、いわゆる「クマ剥ぎ」が主な被害です。秩父地域では、奥地水源地域のスギ・ヒノキ人工林で被害が発生しています。東京都・山梨県境に近い秩父市大滝地区 荒川本流南側の被害が特に目立ちますが、小鹿野町や横瀬町でも被害が発生しています。この被害が深刻なのは、手塩にかけて育てた大きい健全な木に被害が集中することです。繰り返し被害を受けると、樹木は枯れ、森林は荒廃してしまいます。

秩父地域における獣害対策の実施状況

年度 ツリーシェルター等設置面積(本数) 樹皮ガード設置面積(本数) 防護柵設置面(延長)
令和元年度 23.02ha(9,431m)
令和2年度 11.85ha
(3,335m)
令和3年度 4.92ha
(33,791m)
令和4年度 6.56ha
(7,653本)
令和5年度 11.98ha
(8,959本)
24.52ha
(10,308m)

※公社営林(公社資料)を含む。基金事業含まず。
埼玉県秩父農林振興センター調べ

主な対策方法

忌避剤

シカやクマの嫌がる成分が入った溶剤を、植栽木の枝葉・幹へ噴霧器などで散布したり、直接樹皮へすりこみます。一定期間経過すると効果がなくなるので、定期的に塗りなおす必要があります。

ツリーシェルターなど

苗木そのものを1本ずつ囲ってシカが食べられないようにする資材。ネット状のもの、円筒状のものがあります。ポリエチレン製のほか、生分解性プラスチックで作られたものもあります。クマ対策には、成木に樹脂製の防護ネットを巻き付けたり、ポリエチレンテープ、金網、トタン、枝条などを使う方法もあります。

防護柵

保護する林分全体を、支柱を使ってネットを巡らせ、そこへ入れないようにする方法。シカについては、見通しが悪いところを避ける習性を利用し、視界を遮る遮光ネットやシートで囲う方法もあります。

関連情報