林業の仕事とは?
林業の仕事とは?
林業は、苗木を植え育て、育成した樹木を伐採して収穫し売る産業です。木を収穫した後には、再度苗木を植え新しい木を育てます。
苗木を植えてから収穫するには、まず、苗木を植えるための土壌を整えてから苗木を植え、苗木が他の植物に負けないよう草を刈ったり、成長を促すように枝打ちをしたり、生育状況の悪い木や曲がった木など間引きながら、収穫を迎える50~60年間、大切に世話をします。この一連の作業を林業従事者が行います。
教えて先輩!林業のあれこれ
秩父市大野原にある県立秩父農工科学高等学校(通称・秩父農工)には、県内唯一、全国的にも珍しい「森林科学科」という学科があります。生徒の皆さんは、森林を中心にした広範囲の知識や技術を学び、測量、土木、環境、森林、林産加工、情報処理などの知識・技術を習得しながら、森林・林業に関するノウハウを身に付けていきます。
今回、そんな森林科学科の1、2年生の皆さんから、普段の授業内容のことや、森林・林業に関して率直に感じている疑問、そして将来の悩みなどを中心にお話をきくことができました。高校生たちの問いには、林業における就職希望者、雇用する側の事業者をサポートする埼玉県林業労働力確保支援センターの担当の方のほか、林業のプロである、森林組合の先輩たちからもアドバイスをいただきました。
協力:
埼玉県立秩父農工科学高等学校 森林科学科
秩父広域森林組合
埼玉県林業労働力確保支援センター
今日は皆さんよろしくお願いします。では早速、最初は皆さんの普段の授業についての質問をします。森林科学科の授業の中で、一番興味がある、楽しいと思うことってどんなことですか?
<女子生徒>学校の演習林での実習です。間伐や枝打ちをした後、暗い林内に光が入って、隣の山まで見通すことができたときは、風が抜けて、爽やかな気分になります。みんなで力をあわせて、作業を分担して行わなければならないので、実習をやりとげたときの達成感もすごくあります。
<男子生徒>僕も、山の中での実習が楽しいです。ときにはつらく、厳しいときもありますが、それを乗り越えると開放感でいっぱいです。この学校でしか体験できないから、うれしいです。
<女子生徒>それと、演習で育てた木を伐採して、学校で木を加工して色々な物をつくる授業も楽しいですね。
そういえば、森林科学科は、羊山公園の「芝桜の丘」にヒノキの間伐材で使ったベンチを毎年寄贈してますよね。他にも去年(平成25年)には福島県いわき市の仮設住宅のお年寄りのためにベンチを寄贈したと聞きました。教室での授業内容はどうですか?
<男子生徒>普段の座学の授業も好きです。自然の生き様や本質、木の性質や特徴、文化、林業の歴史とか、いままで知らなかったことを学べるから、面白いなぁって思います。
<女子生徒>授業の中で、森の再生可能エネルギーのことや、国産材や外材の現状とかも勉強しました。
秩父広域森林組合の先輩に質問!
結構専門的な授業もあるんですね! さて、ここからは、皆さんの質問に専門の方々が答えてくれます。まず、秩父広域森林組合で実際に山に入って働く先輩に聞いてみたいことはありますか?
<組合Aさん・Bさん>皆さんよろしくお願いします。どんな質問でもいいですよ。
<女子生徒>先輩たちは、なぜ林業の道を選んだんですか?
<組合Aさん>そうですね。私は中学生のとき、テレビで山林が台風の被害を受けて根こそぎ将棋倒しになった状況を見たことがきっかけです。山の木々を自分の力で守りたいと思って、将来林業に関わっていこうと思いましたね。
<組合Bさん>高校のとき部活動で鍛えられた体力を活かしたかったからですね。それに製造業のような同じ作業の繰り返しって苦手でして、その点、仕事内容に変化がある林業は自分に向いてるなって思いました。
<男子生徒>それと、普段の仕事の中でやりがいを感じること、楽しいことってなんですか?
<組合Aさん>皆さんも実習で経験があるかもしれませんが、私は、間伐したり、枝打ちをして山がすっきりしたときですね。
<組合Bさん>授業の中で、森の再生可能エネルギーのことや、国産材や外材の現状とかも勉強しました。
<女子生徒>それじゃあ、逆に一番大変なことって何ですか?
<組合Aさん>山の中での作業ですから、やっぱり夏の暑さや冬の寒さはこたえますね。それに、夏は蜂に刺される危険があるのも大変です。
<組合Bさん>林内での作業は常に危険と隣り合わせなので、緊張感が抜けませんね。
<男子生徒>作業内容のことを聞いてもいいですか? 僕は実習で木を伐採するとき、「うけ口」(木が倒れる方向に入れる切れ込み)をうまくつくれないのですが、うまくつくれるコツって何でしょうか。枝打ちのコツも教えてもらいたいです。
<組合Aさん>うけ口の切り方は、最初のうちはチョークなどで書き込んでみて、だんだん感覚を養っていくといいと思いますよ。枝打ちは、ナタで行う場合は、両刃の刃を使うといいですよ。左右の枝をどっちでもスムーズに切れますからね。
<組合Bさん>うけ口を上手に作るにはとにかく数をこなすしかないですね。あとは、チェーンソー、のこぎりのどちらで伐るにしても、「目立て」(よく切れるように歯を鋭くすること)が上手にできていないと木も上手に切れません。枝打ちも同様ですね。きれいに枝を落とせるようにがんばってください。
<女子生徒>季節によって仕事の内容は変わるんですか? 一年を通しての仕事の流れを知りたいです。
<組合Aさん>基本的には、春は、苗木を植えるために雑草、灌木、地面に落ちた枝葉を除ける「地拵え(じごしらえ)」と「植付け」、夏は、苗木の生育の邪魔になる雑草を払う「下刈り」、秋は、混んできた林の木を間引く「間伐」、冬は、節のない木にするための「枝打ち」、という感じですね。
<組合Bさん>その中でも、間伐と地拵えは季節に関係なくやることも多いですね。それに、年間を通して林道の掃除などもやりますよ。
<男子生徒>山で作業をする時、自分で携帯する道具にはどんなものがあるんですか?
絶対に持って行くべきものなどもあったら教えてください。
<組合Aさん>間伐作業では、ヘルメット、チェーンソー、プラグレンチ、ヤスリ、予備のチェーン、燃料とオイル、ナタとノコギリ、フェーリングレバー、安全クサビ、4mほどのロープを持っていきますね。この中で、絶対持って行くべきものは、ナタとノコギリ。それに、作業の合図を出したり、万が一のために危険を知らせるためのホイッスルは必須ですね。
<組合Bさん>特に、チェンソーを使うときは防護衣、木に登るときには必ず安全帯を着けます。夏には、ハチ駆除用殺虫剤を持って行くことをおすすめしますね。
それでは最後に、高校生の皆さんへのアドバイスがあればお願いします。
<組合Aさん>林業は体力と忍耐です。それに、自然や人に感謝する気持ちと、何事にも謙虚な態度でのぞむことが大切ですね。
<組合Bさん>ときには不満があったり、危険をともなう仕事ですけど、やりがいは他の職業に負けないと思います。林業職を考えている方も、今一度よく考えて、自分の進路を決めてください。
<男子生徒・女性生徒>先輩、ありがとうございました。これからもお仕事がんばってください!
県林業労働力確保支援センターの担当の方に質問!
さて、次は、皆さんが感じている就職についての疑問や悩みなどを聞きたいと思います。ここからは、埼玉県林業労働力確保支援センターの担当の方に答えていただきます。
<労確センターCさん>皆さんよろしくお願いします。皆さん将来の就職について悩みはありますか?
<女子生徒>実は、林業関係ではどんな種類の仕事があるのかいまいちよくわからないんです。森林・林業、そして木材に関係する職業って、どんなものがあるんですか?
<労確センターCさん>森林・林業に関する職業は、皆さんが思っている以上に、たくさんあります。その一部をご紹介しましょう。
<労確センターCさん>例えば、先ほど、皆さんの質問にお答えしていた先輩達が勤める「森林組合」。地域の森林を守る大切な役割を担っています。また、森林所有者さんなどの依頼を受け、主に森林整備や木材生産などを行っている企業「林業事業体」。埼玉県林業労働力確保支援センター(労確センター)に登録されている林業事業体は21社あります。
<労確センターCさん>その他、埼玉の森林を守る林業の専門家「埼玉県や各市町村の林業関係職員」。まだまだ、たくさんありますよ。林業専門学校の「教授や先生」。木を扱うプロ「大工」。山を調査する「測量士」。木々の特徴を活かした「建築士や造園業」。木を利用した「製材業や木工制作」。山の仕事を助ける林業機械のエキスパート「林業機械メーカー」。森林を活用した「公園管理」。また、これから発展する可能性がある新たな産業「木質バイオマス発電」など、様々な分野で森林・林業に関係している職業があります。
<男子生徒>そんなにたくさんの職種があるんですね! でも、森林・林業に関係する就職先があまりないのではないか不安です。もっと就職先が増えたらなぁって思います。現在、林業関係の雇用状況はどうなのでしょうか。
<労確センターCさん>当労確センターが上記の林業事業体(森林組合を含む)を対象に調査した結果、近年では、毎年10名程度の方が新規に雇用されているようです。また、「緑の雇用事業」など、国の就業支援対策事業を活用し、林業就業者の若返りを積極的に促進している林業事業体もありますよ。
<女子生徒>林業職に就くとき、持っていると有利だったり便利な資格・免許について教えてください。
<労確センターCさん>そうですね。林業にも様々な職種があるのはご紹介しましたが、林業作業員として活躍したいなら「普通自動車免許」は必須です。
また、「刈払機取扱作業者安全衛生教育」や、「チェーンソー伐木等業務特別教育」なども受講していれば、即戦力間違いなしでしょう。ただ、資格や免許等を持っていなくても「やる気」があれば大丈夫。就業後に資格を取得できる「緑の雇用事業」などもありますからね。
<男子生徒>まだ僕は一年生ですが、就職のために早いうちに準備しておいた方がいい、考えておいた方がいいことはどんなことですか?
<労確センターCさん>今、一番大事なのは、森林科学科の授業に集中する事です。林業に関する様々な知識を習得できる学校での授業はとても大切です。得た知識は、持っていて損にはなりません。必ず役に立ちます。
あとは、先生や親を含め、自分の身近にいる先輩達に積極的に仕事の話を聞いてみる事も大事だと思います。自分がやりたい事のヒントが得られるかも知れません。
それでは最後に、高校生の皆さんへのアドバイスがあればお願いします。
<労確センターCさん>皆さんには無限の可能性があります。そして、森林・林業にも同じく可能性があります。その可能性を更に広げるのは、未来の皆さんかも知れませんね。森林科学科に入学した時の気持ち、また、林業に携わりたいと思った時の気持ちを忘れずに、知識を深め、技術習得に励んでください。皆さんが様々な森林・林業の職種の中で、自分にあった「林業」を見つられると良いですね。私達も応援しています!
<男子生徒・女性生徒>色々と教えていただいてありがとうございました!
さて、インタビューの締めくくりに高校生の皆さんにお聞きします。ズバリ、将来、森林・林業または木を扱う職業に就きたいと思っていますか?
<女子生徒>私は、森林・林業関係の職業につきたいです。せっかく森林科学科に入ったので、ここで学んだ知識を将来使える仕事をしてみたいです。
<男子生徒>僕も興味があるので、できれば林業関係の職業についてみたいです。あとは、物をつくるのが好きなのと、大工が子どものころの夢だったので、建築関係にも興味があります。これから将来何になるか、色々勉強しながら決めていければと思います。
そうですね、これからも将来に向けてさまざまなことを学んで、経験して、自分を磨いていってください。森林科学科の皆さん、ありがとうございました。